小さな先生たち

あれがぼくのお母さんだよ

優月

 わたしの勤めるスイミングでは
 二階からプールを見学できるようになっています。
 親のみなさんはそこから子供たちを見守るわけですが、
 こちらからも、ギャラリーの様子を見ることができます。

 ある時一人の男の子が、もう言わずにはいられないといった表情で
 こう話しかけてきました。

 「コーチ、あれがぼくのお母さんだよ!
  料理がすごく上手なんだよ!
  今日はスイミングをがんばったらハンバーグを作ってくれるんだ!」


 嬉しさと誇らしさの混じった無邪気な口調で、
 小さな男の子が自分の母親を紹介してくれます。
 お母さんの照れ笑いも合わせて、本当にほほえましい場面です。
 
 その子は自分自身のことを自慢するのではなく、
 素晴らしいお母さんの子供であることを誇るのです。

 ありのままで飾り気がない、つまり素直な子供たちは、
 自分が感じたままに人を褒めることができます。
 謙遜さを装うのではなく、本当に謙遜なため、
 心から人を褒めることができます。


 日本人が美徳とする特質のひとつに“慎み”があります。
 自分や身内を低めることで、相手を敬うわけです。
 それで昔は、家族の中で褒め合うことや
 人前で家族を褒めることは少なかったようです。

 しかし、冒頭で述べた子供のように、
 人前でも素直に家族を褒めるならどうでしょうか。

 きっと、褒められたほうは満たされる思いになることでしょう。
 しかもそれが、おそらく自分の欠点も多く知っているであろう家族、
 我が子からのものであれば、なおさらでしょう。

 夫が妻を、妻が夫を。
 親が子供を、子供が親を。
 
 家族を誇りに思う気持ちは、強い家族を生み出します。


 もちろんわたしたちは家族以外の人たちの気持ちにも
 目を向けたいと思います。
 うぬぼれたいとも思いませんが、それでも、
 家族への愛情を表わすことも決して忘れないようにしたいものです。

 素直にお母さんを褒めた男の子のように、
 家族を愛している、信頼しているという気持ちを
 隠さないようにしましょう。
 
 あなたが大切な人を素直に誇る時、
 その大切な人にとってあなたも、大に誇れる人となることでしょう。


                              優月




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