カウンセリング体験記
VOL.5 こうあるべきの糸
桜井 もも
「いろいろうまくいかなくて・・・」
彼氏のこと、会社のこと・・・体の力を抜いてただ思うがままに話していった。
最初は笑いも交えながら、淡々と話していたと思う。
だけど、どう努力してもうまくいかない日々が私の頭の中で回り始めた。さっき
カルテに書いた小さい頃からのことも思い出し、涙があふれた。
「もう、もう駄目なんです。どんなに努力してもうまくいかないんです。どうし
たらいいのかわからないんです・・・」
恨めればよかった。会社のこと、彼氏、仕事・・・。
すべてを他の人のせいにして、私はこんなにかわいそうなのって言えれば良かっ
た。
だけど、やっぱり仕事も一生懸命やれば張り合いもあるし、部下は私にないもの
を持っていて助けられることもあった。彼氏も仕事が忙しくて自分のことだけで
精一杯なのはわかっていたから。
だから、責められなかった。ううん、責めていたけど、責めきることができなか
った。自分が未熟だからこんな風に考えるんだと思って、できるだけ大人になろ
うと努力した。
だけど、やっぱりつらかった。
カウンセラーの先生はずっと「うん、うん」と聞いてくれた。
そのうん、うんとうなずいてくれる言葉に、全部話してしまおうと思った。
これでこころが軽くなるなら。体が楽になるのなら。
小さい頃両親の離婚を同級生から聞いたこと、母親が死んでから死がとても怖く
なったこと、父親と会っていることを祖母から責められたこと・・・。
誰にも話せなかった・・・、だって話したってどうしようもないから。
話したところで状況は変わらない。
愚痴を言うのは聞くほうに迷惑がかかる。人にそんな思いをさせるくらいなら、
明るく笑っていた方がいい。
社会人になったらこうしなければならない、大人はこうするべき、人格者はこう
あるべき・・・、そんなからみついた糸にしばられて体は身動きができない位に
なっていることに、このときの私は気づいていなかった。
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