みんなのOUCHI

一心の瞳

やまぎし・のら

朝早く目覚めて、パソコンに向かっていたら
「ガタンッ」と音がした。

寝室から聞こえる扉の音。

兄ちゃん?

いや、兄ちゃんだったら「ママー!!」
と騒がしい。

では夫?

いや違う。   「ととととと・・・」

やはり、モモだ。
1歳半のわが娘は、静かに母をさがす。


私は、遠ざかる軽い足音に、慌てて後を追った。
2階にはいない。
暗くて何も見えない階段を下りたの?
私も、急いでリビングへ。

「もも~」

声をかけてみる。
右に視線を感じた。
けれど、存在がはっきり確認できない。
ただ、輪郭のぼやけた濃厚な影があるのはわかった。

その暗闇は、全身で私を見つめていた。


私は一瞬‘ざわっ’とした。
モモだとわかっていながら、ぼーっとした「何か」に怯えた。

  幽霊?まさか~。

でもこんなかも。ふと思った。

  何が?

こんなかも、亡くなった命ってこんなかもって。
はっきりみえないだけで・・・。

病気や事故。あと、生まれられなかった命もそう・・・。


もしかしたら、ちゃんとそこにいるのではないか?
       ちゃんと傍らにいるのではないか。


ただ、見えないだけで・・・。

そんな気がしてきた。


cover


テレビで見た光景。

命が消える前の晩、
6歳の男の子が父に言った。

「ひとりにしないで・・・」

病気で弱った身体を、父はギュッと抱きしめた。


さよならを知っていたの?


小さな命を失った人の悲しみは深い。
ひとりで逝かせたことを不憫に思い、悔やみ・自分を責める。

でももしかしたら、
その子は孤独ではないのかもしれない。

もしかしたら、
真ッサラな愛で見つめいるのかもしれない。


見えるものと、見えないもの。
キャッチできるものと、できないもの。

母が笑うと子はうれしい。そこに確かな幸せの種がある。


アナタが愛した通りに、子もアナタを愛し続ける。
たぶん、ずっとね・・・。


全身で、「一心の瞳」で。 たとえ、消えた命でも。


そう思ってみる。

そう思ってみることで、日々は輝きを変えるかもしれない。

愛されている。
愛される意味のある自分。


大事にしようね。
大事にしないと泣いちゃうよ。 大切な誰かが・・・。


モモは闇夜の中に立っていた。 それはとても不確かだった。

でも、

確かな「一心の瞳」があったんだよ。




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