みんなのOUCHI
数えられる未来
やまぎし・のら
「ひとは何歳まで生きられるの?」
って問われたら、どう答える?
私は、「120歳くらいまでなら、がんばれば生きれるらしいよ~」
なんて、テレビの受け売りで、適当に答えた。
誰に? 5歳の息子に。

お風呂に入ってた。5歳の息子と1歳の娘と、そして私。
すぐ遊びだしちゃうから、息子の身体を何が何でもまず、一番に洗う。
洗わせたり、洗ったり。何で?と思うくらいこれが大騒動。
奇声が飛び交うことしばし・・・。
「俺なんかこんなこともできるんだぜ~」
お尻ふりふり、くもった鏡に落書きするのもいつものこと。
小さな妹にちょっかい出してしかられるのもいつものこと。
「お前は、クレヨンしんちゃんか?!」
ほんと、そんな感じ。
へとへとになるのも日常の風景、バスタブの縁に立ち、飛び込むのも見慣れてる。
「ざぶーん」
息子の体全部、お風呂の中。
数秒の静寂。
「ばっしゃーん!!」
勢いよく、大きな波しぶきとともに、鯨のおでまし、
っと、思ったら・・・。
「うえっくぅ・・・くぇっくぅ・・・」
え?
「うえっ・・うぇっくぅ・・・」
え、え?
「どうしたの?え?何?泣いてんの?何、なに??」
見ると、息子は泣いていた。
顔中水浸し。
お風呂のお湯かと思ったら、顔中満杯の涙だった。
あまりの展開に、理解不能。
さっきまで、クレヨンしんちゃんだったじゃない!!
「え?何どうしたの?何?何かあった?」
「うぇ、くぇ・・・何歳・・くぇ」
「え?」
「くぇ・・・何歳まで」
「え、え?」
「僕は、何歳まで生きられる??くぇ、ひっく・・・ひっく」
え?
「何歳まで?何歳まで生きれるか?えー120歳くらいまでがんばれば生きれるんじゃない?」
すごい適当な答え。
「え、何で?え?それで泣いてたの?」
「うん・・・。ひっく・・・」
「どうしたん、いつまで生きれるか考えてたら恐くなったの?」
「うん」
あらまー、この数秒の間に、何が起こったかと思ったら・・・。
さて、どうしよう?
「でもさー、考えてごらん、にいやん今何歳?5歳でしょ。120まで生きれるとしたらさー、115
年だよ。まだまだたっぷりあるじゃん!そんなこと今から考えてどうするの」
「え? 120歳で死んじゃうの?」
「う~ん・・・と、そうかな~・・・」
返答の困る私。
そんなこと聞かれたって、私がわかるわけないじゃん。
120なんて、かなりおまけつけてあげたのに。
120まで生きれたら充分ジャン。
贅沢ものめ!!なんて思いながら。
「ウワワーーーンッ!!」
今までより100倍でかい声。
「いやだ、ぼく、死にたくない!!120歳で死んじゃうのやだ!
僕、やだ!なんで120歳なの?なんでそんなに短いの?」
しばし、絶句・・・。
120で、短い?
120って短い?
短い・・・・・?
かなり、年を重ねた私は、かなり図太くなってしまったのか?
すでに、折り返し地点にいるはずなのに、まだまだ時間を残されていると思っている。
120が短い・・・か。
年を重ねた私は、終着点をぼかす術を身につけたのか。
そうだった。
数字を覚え始めたんだ。
1、2、3・・・100・・・を超えたんだったね。
そうだよね、数えたらすぐ120はやってくる。
果てしない未来は、数えられる未来に変わっていたんだ。
遠い未来が、あっという間の未来に変わっていたんだ。
5歳のにいやんは、私に強く抱きつき、しばらくずっと泣いていた。
ギュっとギュッと。
痛いくらいの力で。
今を必死で捉まえていた。
大丈夫、にいやんの未来は始まったばかりだよ。
大丈夫、にいやんの未来はこれからだよ。
後は、何も言えなかったー。
にいやんは、最近私によく聞く。
「ママは何歳まで生きられるの?」
はてさて、
120歳のにいやんを見届けるために、150を過ぎた私は生きているのだろうか?
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