みんなのOUCHI

彼岸花

やまぎし・のら

足早に、涼しさが増してきた。

秋が夏の記憶を奪い去っていく。


「冬が近づいてるんだ・・・」
      って、当たり前のことに驚いたりする。


だって、ほんの一週間前あんなに暑かったじゃない!
長袖なんていつ着るの?ってノリだったじゃない!


ほんと、季節はめまぐるしく変化する。

突然、

我が家の庭に赤い花が咲いた。

花が咲くのに「突然」というのも変だけど、
瞬間の印象が「突然」だった。


朱色に近い赤。
線香花火のように、か細い花弁が、放射状に花開く。


それは、可憐で、どこかさびしげで、
どこか、しっとりした落ち着きさえ感じられる。


「この花はなに?こんな花、うちにあったっけ?」


私は、多分、この花をよく知らない。
我が家で見かけないというだけじゃなくて、
この花自体を、あんまり目にして来なかった気がする。

「あ、」
ふと思い出す。

「あ、これ、彼岸花・・・」


友人に何気なくもらった苗。
たしか、それは彼岸花だった。


もらった当初は、ちょっとうれしくて、
「どんな花が咲くかな~」
なんて、葉の成長を見守っていたっけ・・・。


あれから、どれぐらいの月日がたったのだろう?


たしか、あれは一昨年の春先?夏?もっと前??
もう忘れてしまうぐらい、結構な月日は経過したはず。

注目していた葉だったけれど、一向に変化が見えなかった。
小さな細長い葉のままで、

いつしか、
「何が咲くの?他の植えない?」
    家族にいぶかしがられる始末。

いつしか、
あの、小さい細長い葉もなくなって、
「やれやれ、結局だめだったか・・・次何植えよう?」
    って、完全に過去の産物に。

それが、突然、目の前に現れた。

二年くらいの月日を越えて、地上にそびえ立つ。

ただ、花が咲いたから驚いたの?

ううん、そうじゃない。


我が家の庭に、スッと背筋を伸ばして咲いてる。


華々しくもないはずなのに、
派手派手しくもないはずなのに、


何故か、ハッとする美しさを感じさせる。
何故か、控えめな色香さえ感じさせる。


それは、悲しみを秘めている人のように、
それは、喪服をまとった婦人のごとく、


漂いながら、空を仰ぐ。

「すごくキレイ」そう思った。
   
でも、すぐに、
「キレイじゃなくって、美しいんだ・・・」
     そう思いなおした。


ずっと、土の中にいたんだね。

ずっと、出番を待っていたんだね。


焦りもせず、
押しのけもせず、
土の中で、力を溜め、成長を続ける。

誰にも気づかれることもなく・・・。

サナギが蝶になるように。


私も、こんな花、こんな美しい華になれるのかしら?

ふと、自分に問いかける。

今の自分に問いかける。

「彼岸花」


季節をちゃんと憶えていて、

ちゃんと、お彼岸に帰ってきたね。

ちゃんと準備を終えた蝶。

一番輝ける、
一番美しいこの季節に、

「咲いてくれて、ありがとう」
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