みんなのOUCHI
あれから2年
やまぎし・のら
にいやんが4歳のとき、ももちゃんは生まれた。
「何でうちには3人しかいないの?」
たしか、にいやんのその言葉がきっかけだった。
だんだん大きくなってくるお腹とともに、
にいやんは年齢を逆戻りした。
「ママ~かわいいね~きれいだね~」
「ママだ~いすき!」
「ママって素敵だね~」
甘えた声で、甘えた目で、
世界中に誰がいても、
ママだけがにいやんの目の中にいた。
夫とたわいない喧嘩したときも、
「パパのバカ! ママをいじめるな!!」
にいやんは、完全なるママのナイトだった。
「早く産まれてこないかな~」
日々大きくなるお腹をさすりながら、
ますます声は甘みを増していった。
そして、
ももちゃんは生まれた。
そのとき、
にいやんはずっとそばにいてくれて、
ももちゃんの誕生を待っていてくれたけど、
あんまりママが痛そうで、
あんまりママが苦しそうで、
あんまりママの声が大きくて、
その上、
何だか、真っ赤な血なんかも流れたりして、
にいやんは、たまらず目と耳をふさいで、
隣のお部屋に避難したね。
だから、
「誕生」
って瞬間は見てなかった。
「こっちおいで赤ちゃんだよ」
病室に戻った私は、にいやんを手招きした。
「おいでおいで」
手招きを続けたけど、
にいやんはこっちへ来ない。
全然、近寄っても来なかった。
にいやんをいくら呼んでも、
にいやんをいくら見つめてみても、
にいやんの目は私を避けて、ずっと下を向いたまま。
「どうしたの?こっちおいで」
「・・・・・・」
にいやんは、
病室の端っこで固まったまま、
ずっと動かなかった。
ももちゃんが生まれて二日、
夕方になっても、
にいやんはなかなか病室から離れなかった。
「帰らない」
そう言って、手伝いに来ていた祖父を手こずらせた。
むりやり祖父に連れて行かれたけど、
「いやだ!いやだ!!!」
手足をバタバタさせ、激しく抵抗した。
大仕事を終えた私は疲れていて、
正直、帰ってくれたことに「やれやれ」と思い、ほっとした。
すると突然、
「いやだよ~!!いやだよ~!!ママ!!ママ~!!」
病棟の遠いほうから、にいやんの声が響いてきた。
「僕はママが大好きなんだよ~!! 一番大好きなんだよ~!!!」
大きな叫び声が病院中に響きわたった。
退院して、家にももちゃんが来て、
にいやんの横にももちゃんがいて、
私が歯磨きでちょっと離れたとき、
突然、ももちゃんが泣きだした。
産まれたての赤ちゃんの泣き方は特別で、
直線的で、攻撃的で、爆発的。
「あ、泣いてる」
歯磨きをしながらそう思った瞬間、
泣き声が急に小さくなった。
「え?」
小さいというか・・・。
私は急いで駆けつけた。
布団がかぶさってる!
にいやんがももちゃんに布団をすっぽり掛けていた。
「え?え?何してるの!!」
私はいそいで、布団の海からももちゃんを助け出した。
「だめじゃない!! 死んじゃうじゃない!!!」
私は声を荒げた。
「・・・いらない!!」
「え?」
「いらない!!」
「え?なに?」
「ももちゃんなんかいらない!!!」
「え?なに・・・?」
「きらい!」
「え?」
「きらいなんだ・・・」
「え?」
「え、え?なに?誰が??」
「ももちゃんが、ももちゃんが、
僕のそばで泣いたから、僕のこと嫌いなんだー!!!」
そう言うと、にいやんは大声を上げて泣き出した。
ももちゃんも、また、
その声につられて、一層大きな声で泣き続ける。
「ふ~・・・」
本当にもう・・・。
私も一緒に泣きたくなった。
あれから2年。
ももちゃんは、
もう立派に生意気におしゃべりもする。
「しっかりもの」
そういうフレーズが、すごく似合う娘になりつつある。
あれから2年。
にいやんは、
あいかわらずの「にいやん」だけど、
口答えはかなり生意気になってきた。
「ママなんて大嫌い!!」
「そう、嫌いで結構!」
なんて会話もだいぶ増えたなあ~。
あんなに、ママ大好きだったのにな~。
原因は、だいたいももちゃんで、
にいやんにちょっかい出して、
泣かされる。
「ももちゃんなんていない方がいい!」
泣きながら何度そんなことを言っただろう?
「ママのばか~!ももなんてどっかいけ!!」
でもしばらくすると、
「ももちゃん、こっちおいで!これ一緒に見ようか!」
って、笑ってやさしいの。
あれから2年。
ももちゃんは、
怒鳴られ、たたかれ、蹴飛ばされ、邪魔にされながら大きくなった。
でも、
ももちゃんの一番大好きな人誰だと思う?
それは、やっぱり、
「にいやん」
なんだってさ・・・。

(コミュニケーション)コーチングとコミュニケーションの魔法 ||次へ→
▲ページのトップに戻る
直感力や記憶力、集中力がアップする奇跡の思考ツール
|

マインドマップの書き方
毎朝1分★天才のヒント |
