みんなのOUCHI
しあわせ
うちのら
「しあわせ」ってなんだろう?
私は、いつ幸せだった?
普通の暮らしをできる今も、幸せには違いない。
結婚したこととか、
子どもが生まれたときとか、
家を購入したこととか、
確かに幸せだった。
うん。幸せだったよな~。
でも、
今、「しあわせな瞬間」として思い出すのは、
全然違う場面だったりする。
3年前、
年末に温泉に行った。
それほど遠くないヒナビタ温泉地。
にいやんが3歳の終わりごろで、
まだベビーファイスでね、
まだ、悪ガキになるって知らない頃。
私のお腹にはモモがいて、
その頃「はんにゃちゃん」なんて変な名前で呼ばれてた。
そんな頃。
モモは、
ちゃんと引っ付いてこの世に生まれてくれたけど、
軽い切迫流産で、私は仕事を早々と辞めていた。
自分で望んだ仕事だったけど、
結構緊張する仕事で、
結構責任があって、
結構、孤独だったから、
離れることにしたときは、
寂しさもあったけど、正直、どこかホッとしていた。
近頃は家族が増えて、出費もかさんで、
家族で温泉なんて、そうそうある話ではなくなったけれど、
あの頃は、そうない話でもなくて、
けっこう度々出かけていた。
だからなのか、記憶力がないせいか、
今までに行った温泉のことを、私はさほど憶えていない。
たびたび、夫の怒りの基となるけれど、
憶えていないものは憶えていないのだから、仕方がない。
たくさんお風呂に入った。
たくさん食べた。
にいやんは、男女の露天風呂を何度も順番に入った。
にいやんも浴衣をかしてもらったら、
とってもはしゃいでね、
何度もクルクル回りながら踊っていた。
家族風呂もあって、みんなで一緒に入って、
そしたら大きな柱時計があって、
にいやんが「恐い!」って。
でも気になって何度も見てたな。
高台の温泉で、下の方に大きな河が流れていて、
温泉に入りながら河の流れを眺めることもできた。
何かいいな~何か楽しい。
そうは感じていた。
仕事を辞めた開放感。責任を解かれた安堵感。
ようやく二人目を妊娠し、
切迫流産をどうやら乗り越えたほっとした安心感。
にいやんが手が掛からなくなって、
やたら可愛いこと。
家族でこうして年末を過ごせること。
多分、どれか一つでなく、
そんなこと全部が重なっていた。
夜、
にいやんと、二人で温泉に入った。
外は真っ暗。
それでも水が温かいのか、
河から湯気がもくもくと上がっていた。
もくもくと、
湯気は河の流れと平行に、横に横に流れては消えていく。
すごく、幻想的な情景だった。
「夢みたい」
突然にいやんが言った。
「え?」
「きれいで、夢みたいだねーって」
本当だ。
本当だなあ。
夢みたい。
夢みたいだ。
雲の中の私たち。
「夢みたい」
そう言ったにいやんも
この現実も
皆、夢みたいだと思った。
私は、その時感じた。
「今、私、しあわせだー」
確かに、そう思った。
私は闇の中の、ふわふわの雲の世界の中にいて、
にいやんがいて、
私を好きだと抱きついて、
「夢みたいだねー」って言っている。
うそみたいな、
幻みたいな、
消えてしまいそうな儚い瞬間。
そのとき私は、
確かな「しあわせ」を感じていた。
大金持ちになったでも
何かに成功したわけでも
何かに合格したわけでもない。
でも、確かにそう感じた私がいて、
今も憶えてる私がいる。
いつかまた行ってみたいな。
あの温泉。
麒麟山温泉。
その時、私はまた、
「しあわせ」を感じることが出来るだろうか?

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